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    マンホール(66):明治生命館の靴洗栓

    8月位に本郷からひたすら本郷通りを南下して丸の内界隈まで歩いたことがある。
    そのとき、明治生命館の入り口の脇で見つけたもの。

    mh66-1.jpg
    上はよくある散水栓なのだが、注目すべきは下である。「靴洗栓」とあるのがわかるだろう。
    路面の舗装が現代のように普及する以前の時代には、土埃や雨天時のぬかるみは都心でも相当酷いものだった。
    そのため格のあるビルの入り口にはしばしば、靴の泥を落とす専用の水道栓が準備されていた。また街頭には靴磨きを生業とする人々の姿も見られた。
    この画像はその名残である。舗装道路の普及やらで、今は靴磨き共々消えてしまった。

    mh66-2.jpg
    ちなみに明治生命館は1934(昭和9)年竣工。昭和の建造物としては初めて国重要文化財指定を受けたものとの由。
    入り口上部の画像からだけでもその威容がわかると思う。

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    チャペック『ロボット』幻の日活映画化

    さっき読売新聞のアーカイブを見ていたら見つけたが、チャペックの「ロボット」を日活が映画化する企画があったらしい。
    日本で初めての 構成派の映画
     チャペック『人造人間』を 日活が近く撮影する

    という見出しで、1925(大正14)年2月3日の紙面に出ている。
    同記事によると、
    先頃築地小劇場でも上映されて問題になつたチヤペツク作、鈴木善太郎氏譯の『人造人間』を映畫に制作することになったが、その演出、背景その他について〓畫界で今までかつて試みられた事のない 
    ◇構成派 に依って作るといふ。

    その撮影監督には日活の村田監督か溝口監督が當る筈であるが多分村田氏がそれをやることになるだろうといふ。
    そうである。(〓は原文で空白。活字が脱落したんだろう。)

    村田監督とは戦前の大物・村田実(1894-1937)であろう。溝口監督のほうはいうまでもなく後の巨匠・溝口健二(1898-1956)であろう。どちらにせよ、結構な企画ではないか。

    また、構成派の背景を手がけるのは村山知義が予定されていたらしい。村山は1924年12月5日~20日の築地小劇場公演「朝から夜中まで」で初めて演劇・映画の装置を手がけている。早稲田大演劇博物館・演劇上演記録データベースによれば築地小劇場の「人造人間」上演で装置を手がけたのは宮田政雄か吉田謙吉ということなので、部隊のそれをそのまま引っ張ってきたものではないようだ。

    しかし、これが完成され、公開されていたという話は聞いたことがない。この後ぽしゃったんだろうと思いながら一応両監督のフィルモグラフィや1925~6年頃の日活のリストを見ていたら、溝口監督作品で
    『人間 前後篇』製作=日活大将軍撮影所(1925年12月公開)
    というのを見つけた。スタッフを確認すると、原作に鈴木善太郎とあるではないか。鈴木は上の引用にもあるように、チャペック『ロボット』の訳者である。
    これはもしや、と思いつつネット上にあった配役表を確認すると、

    配役    
    室伏次郎 ................  中野英治
    お千代 ................  岡田嘉子
    黒眼鏡の男(六役) ................  高木永二
    次郎の母お絹 ................  市川春衛
    薬屋の主人富田壮七 ................  坂東巴左衛門
    その息子丑太郎 ................  東坊城恭長
    政党副総裁 ................  星野弘喜
    雪枝 ................  浦辺粂子
    金千寿 ................  森清
    芸者光勇 ................  酒井米子
    妹芸者君若 ................  徳川良子
    牧師ハーバート・スペンサー ................  御子柴杜雄
    その娘エリナ・スペンサー ................  砂田駒子
    社長・羽田 ................  三桝豊
    羽田の娘綾子 ................  梅村蓉子

    という具合であった。こりゃ全くの別ものだ。チャペックにゲイシャガールは出てこないぜ!
    しかし、時期・撮影所・題名の一部・スタッフなどがこれだけ被っていることから察するに、恐らく企画自体は上記新聞記事のものが発端ではないかと思われる。特に通常映画に関わることが殆んどなかった鈴木善太郎が原作という辺りがそう思わせる。
    よく見ると入江たか子の兄やら浦辺粂子やらが出ているぞ。
    一体全体、どうしてこうなった……。


                  



    引用元:http://www.jmdb.ne.jp/1925/ba004260.htm

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    プロフィール

    rzeka

    Author:rzeka
    マンホール等探索者。

    因果なことにアカデミックニート=人文系大学院生でもある。
    rzekaはポーランド語で川の意。因みに発音はIPAだと[ˈʒɛka]になる。「じぇか」に近い音。



    当ブログについて:リンクはご自由に。拙文がリンクされるようなサイトの話題には多分関心があるので、よければリンク張ったら呼んで下さい。画像の直リンクはfc2の環境上望ましくない(ちゃんと表示できないケースが多い)ようですので、あまりおすすめしません。なるべく記事ごとかブログトップ、カテゴリトップへのリンクを推奨します。但し、文章・画像その他すべての著作権は当方に帰属します。 ©rzeka

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